『ブラックミラー』というシリーズに、巨大な壁に囲まれたコミュニティー内で出会いと別れを繰り返す男女を描いたエピソードがある。ペアになる相手と期間が謎のシステムにより決められて、その期間をその相手と過ごし、期間が終了すると別れ、それを何度か繰り返した後、最後にシステムにより「運命の人」が決定され、その人と結婚することになる。

このエピソードの主人公の男女は、一連のプロセスの初めにペアになるのだけれど、その後別れて、数年の間にお互い複数の相手と付き合い、最後、違う相手と結婚することを言い渡される。

そこでふたりは、一緒になりたいという自分たちの想いに気づき、それを尊重し、システムに従わないことを決め(それはこの世界ではタブーとされている)、さまざまな妨害をかわし、コミュニティーの外で暮らすために巨大な壁を乗り越える。

高い高い壁を越えると、突然、異空間に転換し、ふたりの間に起こり得る幾多のストーリー/パターンのデータが昇華して、壁を乗り越えることに成功したこのパターンが採用され…

さらに場面が転換し、するとそこは街のバーで、今まさに出会おうとする瞬間のその男女のスマートフォンのデートアプリが映し出される(壁に囲まれた世界は、アプリのアルゴリズムの世界だったということ)。アルゴリズムの一瞬の働きと数年の物語がイコールで結ばれる。

そんなふうに、この世界のラインと別の世界のライン、もしくは同じ世界のライン上の別々の時点で、一瞬が10年間を=10年間が一瞬を、3時間が数年間を=数年間が3時間を、もしくはもっともっとおおきな差のある時間同士が、互いに互いを内包している、そんなことがあるのかもしれない。

「想い」の単位はきっとイコールなのだ。一瞬の想いが100だとして、それを10年間という物語の中で体験する。同じことの大小さまざまな幾つものバージョン。

あの時のあの想いが、その後の長い物語になる。別世界の誰かの想いが、ここでの数年間の物語になる。

互いを結び内包し合う細い線に赤い色を付けたら、きっととてもきれいなのだろう。