『名前のない森』について
わたしの中には、いつの頃からか、森の景色がありました。
日が暮れて、薄暗くなって、夜のはじまり。どこからともなく風が吹いてきて、その風はだんだんと強くなり、森の全体がざわざわと動き出す。まるで、生きているかのように。その様子を、森の入り口のあたりから眺めている。
デヴィッド・リンチの作品に出てきそうな景色ではあるのだけれど、それを追想しているわけでもない。かといって、実際に行ったことのある場所でもない。
きっと、何らかの原風景なのでしょう。
森の景色があまりに迫ってくるので、このシーンを、わたしの中から外へ出さずにはいられなくなった。そして、出してみようと試みたとき、このシーンを起点に、時間と空間が前後に展開し、この物語が表れました。
書いてみて初めて「そういう森だったのか」と、わたし自身、発見したようなところもあります。
書いて外へ出したら、森の景色がわたしの中から消えるのでは、と期待していたようなところもあったのですが、そうはならなかった。
景色は、まだあります。なくなるようなものではなかったのでしょう。けれど、以前よりも、ずっとずっと安心してこの森を感じられるようになりました。そして何より、この森に委ねられるようになりました。それが、やりたかったこと、だったのでしょうね。
わたしだけの森、なのかもしれないけれど。
もしかすると、みなさんもどこかで知っている森、なのかもしれません。
2017年〜18年にかけて執筆、以降、有料でお届けしてきましたが、感じるところがあり、2026年4月25日、無料公開へ切り替えました。
短編小説ほどの文章量です。必要な方、ご縁のある方に届きますように。
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森と街、仔鹿と彼、陽光と雷雨、教会と閃光、ひとりとふたり。
交錯しながら溶けてゆく、ふたつの物語。
『名前のない森』 全7章
*物語の無断転載はご遠慮ください
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